「やれることは全部やった。あとは、本番を楽しもうね!」

佐々木公園の中央に作られた特設のステージ裏で、
私はMARGINAL#4の4人にそう声をかけた。

急な会場変更から一夜、
ついにMARGINAL#4アルバム発売記念ファン感謝イベントは
開催当日を迎えることとなったのだ。
想像していた以上にお客さんが来たこともあって、私は受付の手伝いに回っていた。
やっとステージ裏に戻ってこられたのは、開演の5分前だった。
息を切らして戻った私に、ルイくんがペットボトルの水を差し出してくれる。
私はそれをひとくち口に含んでから、言った。

「みんな! お客さん、たくさん来てるよ!!」

その言葉に、みんなの表情が明るくなった。
先ほど私が受付についた時、そこにはすでに列の整理が追いつかないほど
たくさんのお客さんがいたのだ。
配布していたイベントTシャツは、さっそく着てくれる人が多かった。
会場がTシャツを着た人でいっぱいになるところを想像すると、今からワクワクする。

「アールくんのデザインTシャツ、お客さんすごく喜んでたよ!」
「本当……!? よかったぁ……!」
「これは俺たちも本気出していかなきゃね~!」

エルくんはそう言って、シルクハットを被ってみせた。

「みなさん! そろそろ準備お願いします!」

スタッフの人が声をかけに来た。
いつの間にか開演直前になっており、BGMも流れ始めている。

「じゃあみんな、行ってらっしゃい!」

私の言葉に笑顔で頷いた4人は、そのままステージへと飛び出していった。
大きくなるBGM。4人が登場すると、割れんばかりの歓声が辺りに響き渡る。
その声を聞き届けてから、私は会場の1番後ろへ向かった。

 ★☆★

(ここら辺で……いいかな?)

少しステージから離れてしまうが、一望できる位置に私は立った。
マネージャーである私は、普段ならステージを袖から見ることが多い。
けれど今回はお客さんの声を生で聞き、そして同時に、
4人を正面から見てみたいと思い、この場所を選んだのだった。
スピーカーを通してみんなの声が私のところまで届く。

「スタクラのみなさん!
今日は突然の会場変更にも関わらず、集まってくれてありがとうございます!」

アールくんがお客さんに向かってそう呼びかけると、わぁっ! と歓声が起こった。

「オマエら! ここにぶら下がってる紙が見えるかー!?
『銀河の果てまで! 100万回のLOVE★MASQUERADE』!!
このイベントのタイトルだ!
エルが、ここに吊るしたらいいんじゃねーかってアドバイスくれたんだぜ。な、エル!」
「うん! せっかくならみんなに見てもらいたいしね~!
もう知ってる子もいると思うけど、これはアトムくんが
みんなから案を募集して考えたんだ、いいタイトルだよね」
「ちなみにこれは、アトムくんの直筆なんですよ」

ルイくんが言うと、お客さんから歓声が上がる。提案通り、展示して正解だったようだ。

「無事タイトルが決まったのは、オマエらのおかげだぜ! サンキューな!
……そして!」
「今みんなが着てるそのTシャツ……デザインしたのは誰だと思う~?」

アトムくんとエルくんが顔を見合わせながらそう言うと、アールくん!
と、会場から声が上がった。
はにかんで頬を赤らめたアールくんは、1歩前に出ると頭を下げた。

「こうして改めて言われると、照れちゃうね……
えっと、みんなTシャツを着てくれてありがとうございます。
ぼくの、メンバーに対する想いや、
ファンのみなさんへの感謝の気持ちを込めてデザインしました。
それが伝わったら嬉しいです!」
「このイベントが終わったあともぜひ着てくださいね!」

ルイくんの声に、着るよー! と何人ものお客さんが声を上げた。
その反応が見られただけで、私はほっとする。

(みんな、Tシャツ喜んでくれたみたいでよかった……!)

アールくんが後ろに下がると、突然ステージを照らしていた照明が落とされた。
ざわめき始めるお客さんに向かって、暗闇の中からアトムくんの声が聞こえてくる。

「ここからは、エルとルイの企画に行くぜ! まずはー……エル!」

パッと照明がつくと、Tシャツ姿から一変、
黒いタキシードに身を包んだエルくんが登場した。

「まりもガール、それからまりもボーイのみんな! お待たせ~!
これから、エルくんのマジックショーがはじまるよ~!」

エルくんはシルクハットを取ると、うやうやしくお辞儀をした。
どこからともなくBGMが流れ始め、エルくんは滑らかな手つきでトランプをきっていく。
しかし、その途中でエルくんの手が止まる。
何かの異変に気付いたのか、うーん、どうしよっかなーと呟いた声が
インカムを通して聞こえてきた。

「……ていうか、このトランプじゃ後ろまで見えないよね?
少し大きめの作ってきたんだけど……見えない子いる?」 

エルくんがそう問いかけると、何人かが手を挙げた。

(特設のステージだから、スクリーンは貼れなかったんだよね……
後ろのほうだと、せっかくのトランプが見えないかも……)

私がそう思っていると、ルイくんの声が聞こえてくる。

「エルくん、見えにくい方もいるようですが……どうしますか?」
「うーん……どうにかして、後ろにいるみんなにも見せてあげたいんだけど……」

ステージ上でエルくんが腕を組んだ時、
突然ステージの横に停めてあったトラックにスポットライトが当てられた。

(え……何!?)

思わず立ち尽くしてしまった私の視線の先で、トラックの荷台が音を立てて開き始めた。
そこから現れたのは、巨大なスクリーンだ。

「うおおお!? なんだよ、これ!?」

アトムくんがステージ端まで走り、身を乗り出してスクリーンを覗き込む。
すると、スクリーンいっぱいにアトムくんの顔が映し出された。

「えええ、オレ!? デカっ!!」
「ど、どういうこと、なの……?」

インカムから聞こえてくるアールくんの声は驚きの色を含み、
エルくんは目を見開いたままスクリーンのほうを見つめていた。

(あれって……スクリーン、だよね。
でも、スクリーンなんて手配した覚えは……)

「マネージャー、どうする?」

控えめな声で耳に届いたのはエルくんの声だ。その声に、私ははっと我に返る。

(そうだ、ちゃんと指示を出さないと……)

今はアトムくんたちがステージの上で、なんとか話を繋いでくれているようだった。
私は急いでステージ裏に戻ろうと、足を踏み出す。
すると、まるでタイミングを見計らったかのように携帯が震えだした。

(え……社長!?)

私は慌てて、通話ボタンを押す。
会場のざわつきに反して、電話の向こうからは社長の凛とした声が聞こえてきた。

「イベントは順調に進んでる?」

私は思わず口ごもる。この状況をなんと言って説明したらいいか……。

「大丈夫よ。何も心配することはないわ。そのまま続けさせて」
「……え?」

聞き返すと、社長はもう1度「大丈夫」と言った。

(……迷ってる時間は……ないよね)

力強い社長の言葉に後押しされ、私はインカムに向かって口を開けた。

「エルくん、大丈夫。そのまま、続けて!」

私の言葉に、ステージ上の4人はピースサインで合図を送ってくれる。

「ちょっとドタバタしちゃってごめんね。
このスクリーンを使ったら、後ろの子もちゃんと見えるかな~?」

スクリーンが、大きくステージを映し出す。
それを見て、先ほど手を挙げたお客さんからも、見えるよー!
と声が上がった。それを確認すると、エルくんは満足そうに笑った。

「それでは改めて。エルくんのマジックショー、再開!」

再び歓声の沸く中、エルくんは華麗にトランプの絵柄を星マークに変えてみせた。

「……どうらやうまく進んだみたいね」

電話口から社長の声が聞こえてきた。
通話中のままにしていたことを思い出し、私は慌てて携帯を握り直す。

「あの、社長……。トラック、本当にありがとうございました」
「……ふふ、残念ね。それは私じゃないのよ」

社長の口から返ってきた言葉に、私は首を傾げる。社長ではないなら、一体誰が……?
そう思ったのが伝わったのか、社長は意味深に笑ってこう言った。

「あなたたちを応援しているのは、ファンだけじゃないということよ」

(どういう意味だろう……?)

しかし、それを聞き返すことはできなかった。
会場が再び歓声に包まれた時にはすでに電話は切られてしまっていたのだ。

(あとでちゃんと聞いてみよう……。それより今はイベントに集中しなきゃ!)

携帯をしまい終えてからステージに目を向ける。
どうやら、エルくんは次のマジックの準備をしているようだった。

「それじゃあ次のマジックにうつるよ!」

エルくんがお客さんに向かってウィンクをすると、
他の3人がステージ裏から風船の束を持って現れた。

(そういえばエルくん練習の時に、本番ではもっとすごいことするって言ってたよね……。
あの風船と何か関係しているのかな……?)

「おいおい、エル……とりあえず、言われた通り風船持ってきたけどよ……
オレたちなんも知らねえぞ?」

風船の量が多すぎて前がよく見えないのか、
アトムくんがよろめきながらエルくんに声をかけた。

「これからやるのは、メンバーも知らないマジックなんだ~!
きっとみんなをびっくりさせてみせるよ。ルイくんもアールも準備はいい?
せーので、風船を離してね? ……いくよ? せーの!」

エルくんの言葉と同時に、3人の手を離れる色とりどりの風船たち。
みんなが空を見上げたその時、エルくんが指を鳴らした。
次の瞬間。
空に浮かんでいた風船が一斉に割れ、中から星型のカードが降ってくる。

「わっ……!」

私は思わず、声を上げていた。お客さんたちも、
そしてステージ上にいるアトムくん、ルイくん、アールくんも、
驚いた表情で、空を見上げていた。

「いつも俺たちに星を降らせてくれるみんなへ、俺からの感謝の気持ちだよ!」

エルくんの言葉に、会場は再び歓声に包まれる。

「うおお! すげえ! オマエ、マジシャンかよ!?
くっそー、ムービー撮ればよかったぜ!」
「エル君すごいですね……!」
「こんなマジックを隠してたんだ……!
ぼくたちが練習に付き合った時は、トランプの柄を変えるところまでしか、
見せてくれなかったのに!」

他の3人も口々に驚きの声をもらす。そんな様子を見て、エルくんは嬉しそうに頷いた。

「みんなが驚いてくれたなら、良かったよ~♪
それに、スクリーンを貸してくれた人にも感謝しなくちゃね。
じゃ、俺のコーナーはここまで! そろそろ最後のパフォーマンスに移ろうか?
ね、ルイくん」

エルくんがそう言ったのと同時に、曲が流れ出す。
お客さんたちも待ちに待った、といった様子でペンライトを灯し始める。
初めはまばらだった光も、曲の前奏が終わる頃には、会場全体に広がっていた。

「みなさん、お待たせしました! 僕のパフォーマンスは、新しいダンスの振り付けです!
これから僕たちがメドレーを披露しますので、
みなさんも一緒に踊って、盛り上がりましょう!」

歓声と同時に、ステージの中央に集まった4人は歌い出した。
メドレー1曲目はもちろん「100万回の愛革命(REVOLUTION)」だ。

「僕たちの動きに合わせて、踊ってみてくださいね」

ルイくんを筆頭に、みんなでレクチャーを加えながら踊っていく。

(こうやって、お客さんが一緒に踊ってくれてるのを見ると、私まで嬉しくなっちゃうな)

「おーい、そっち側! もっと腕振れー! オレ様みたいに、こう……激しく……!」

アトムくんがそう言って腕を力強く振れば、お客さんもそれに応えてくれる。

「わかんない子は俺のこと見てていいよ? あ、でも夢中になっちゃって踊れないかな?」

エルくんがそう言えば、黄色い声が上がる。

「歌も口ずさんでくれたら嬉しいな!」

アールくんがそう言えば、会場に歌声が増えていく。
お客さんとMARGINAL#4がひとつになって、イベントを盛り上げていた。
その様子に、私は胸が熱くなる。

(よかった……お客さんたちも楽しそう。このまま順調に進んでくれれば……)

そう思いながら、ステージのほうに目を向けると、
ちょうどメドレーが終わったところだった。
あちらこちらに散っていた4人が再びステージの中央に集まる。
ここで締めの挨拶をして、イベントは終了だ。

「みなさん、ありがとうございました……! 一緒に踊っていただけて嬉しかったです!」

ルイくんが一礼して後ろに下がると、途端にBGMが止む。

「っと……楽しかったイベントも、
どうやら終わりが近づいてきてしまったみたいですね……」

ルイくんが言うと、会場のあちこちから残念そうな声が上がる。
しかし、アトムくんだけは違った。

「ちょーっと待ったー!!」

会場中の悲鳴に負けないくらい大きな声で叫ぶ。

「オマエら! 悲しむのはまだ早いぜ!」

その言葉に、さっきまで俯いていた3人が笑顔でマイクを握り直す。

「本当ならここでイベントは終わりなんですが……急な会場変更にも関わらず、
ここまで集まってくれたみなさんにぼくたちから特別なプレゼントを用意しました!」

アールくんの言葉に、会場にはざわめきが広まった。……それは私も同じ。

(プレゼント!? そんな演出聞いてないけど……)

するとスピーカーから、新曲の「STAR SYMPHONY#4」の
前奏が聞こえてきた。
新曲だと知って、会場のボルテージが再び上がる。

「みなさんに、感謝を込めて歌います!」
「イベントでは初披露かな? 最後まで、よ~く聞いてね♪」
「行くぜ! 「STAR SYMPHONY#4」!!」

歌い出すみんなの声を聞きながら、私はぽかんとしていた。

「……マジフォーのマネージャーさん」
 
誰かが近づいてくる足音が聞こえてくる。
振り返ると、そこにはマダム・ミエコの姿があった。
思わぬ人物の登場に、私は上擦った声を上げた。

「あ、来て下さったんですか……!」
「ええ。私自身が占った結果を確かめるためにネ」

驚きました、と言いながらマダムはステージのほうを見る。
ステージではまだ4人が踊っていた。

「私は自分の占いに自信を持っています。
だから、あの4人はきっとこのイベントを成し得ないと思っていたのですヨ。
それなのに……」

マダムはそこで言葉を切ると、真っ直ぐに私の目を見た。

「本当に驚きました……動かないはずの星たちが、動いたんですから……」

星を動かしたのは、きっとあの4人の力だと私は思う。
どんな困難にぶつかっても、最後まで諦めない。
来てくれるお客さんのことを考え、一生懸命になる。
その姿が、運勢を変えたに違いない。
辺りはいつの間にか暗くなっていた。
夜空に星が輝きだす。会場もペンライトの星に彩られ、
ステージで光る4つの星は更に輝きを増していった――。

  ★☆★

「あーーー! 終わったーーー!!」

私が差し出したペットボトルの水を一気に飲み干したアトムくんは、
そのまま芝生に倒れこむ。
つい先ほど、大歓声の中イベントが終了した。
撤去作業の傍らで、私たちは集まっていた。
エルくんも、アトムくんの横に倒れ込みながら声を上げる。

「あ~、楽しかったね~!!」

倒れこんだふたりの横に座りながら、ルイくんも興奮した様子で言った。

「はい! お客さんにも喜んでいただけて、よかったです!」
「みんな、本当にお疲れ様!
色々予期せぬこともあったけど、何事もなく終えられてよかった!」

そう言いながら、私はみんなにペットボトルを配る。 

「最後新曲を歌ったのは、ぼくたちからのサプライズだったけど……
マネージャー、あのスクリーン付きのトラックありがとう! びっくりしちゃった!」

アールくんにそう言われて、私もハッと思い出す。
新曲のことで頭がいっぱいになっていたが、
あのトラックについても確認しておかなければならない。
私は辺りを見回した。トラックはいつの間にか消えている。

「それが……あのトラック、私が手配したんじゃないの。
新曲のこともあったから、あれもみんなからのサプライズだと……」

(あ、でもそういえば、社長が言ってたよね。
私たちを応援してるのはファンだけじゃないって……。
あの言葉と何か関係があるのかな……?)

私がそう考えていたところで、ちょうどひとりのスタッフが
大きな荷物を抱えてやってきた。

「MARGINAL#4のみなさん、イベントお疲れ様です!
差し入れを届けにきました!」

(差し入れ……? 誰からだろう……?)

スタッフが去ったあとで、私たちは箱の周りに集まる。せーの、で開けた。
中から出てきたのは……カレーのお弁当と、シナモンロール。
それを見て、私はピンとひらめいた。この組み合わせは……。

「まさか、牧島くんと……緋室くん……!?」
「ん……これ、チキンカレーだ!
じゃあやっぱりこれ送ってくれたのシャイとキラじゃん!」

すでにカレーを食べ始めていたアトムくんが言った。
頭の中に、MARGINAL#4の先輩アイドルユニットであるふたりが浮かんだ。
ここにきて、やっと社長からの言葉の意味がわかり、
私は心の中で、ありがとうございますと頭を下げる。

「てか、オレ様のツイートさ……ラグジュリエットの人たちも
リツイートしてくれてたみたいなんだよな」

ラグジュリエットというのは、牧島くんと緋室くんのユニットである
LAGRANGE POINTのファンを指す言葉だ。
そんな人たちまで協力してくれていたとは思わず、
私は社長からの言葉を身に染みて感じた。

「この差し入れも含めて……本当にありがたいですね」

ルイくんはシナモンロールを頬張りながら、そう答えた。
思わぬ先輩からの差し入れに、みんな疲れも忘れて嬉しそうにはしゃいでいる。
みんなが食べ終わった頃、私は再び口を開いた。

「今日は本当にお疲れ様!
ここまで色々なことがあって、うまくいかないんじゃないかって思ったことも
あったけど……でも今日こうしてイベントを大成功させたみんなに、
マネージャーとしてお礼を言わせて下さい。ありがとう」

私は頭を下げた。
今日ほど、MARGINAL#4のマネージャーでよかったと思ったことはない。

「……マネージャー、顔を上げて?」

頭上からアールくんの声が降ってくる。
ゆっくり顔を上げると、照れくさそうに笑うアールくんと目が合った。

「お礼を言いたいのはぼくたちのほうだよ」
「ホント、支えてくれて、ありがとな!」

アトムくんも私の目を見て、ニッと笑った。

「マネージャーがいなかったら、今日のイベントは成功していなかったと思います」
「俺たちが楽しくできたのは、アンタのおかげだよ」

口々にそういうみんなの言葉に、私は目頭が熱くなるのを感じた。

(ううん……私は何もしてない。みんなが頑張ったから成功したんだよ……!)

込み上げるものを抑えようと、私は首を横に振る。
それを見て、アールくんが静かに言った。

「……ねぇ、マネージャー。ピースしてみて?」

突然のことで、ワケがわからないが、とりあえず言われた通りにする。
すると、他のみんなも私と同じように右手でピースサインを作った。
4人は目配せし合うと、そのままお互いの指を繋げる。
中途半端に一辺だけ開いた空間に視線が集まった。

「マネージャー、そこに指を繋げてみてください」

5人のピースサインを繋げると……そこに星が生まれた。

(あ……!)

「アンタはどうせ、自分は何もしてないって思ってたんでしょ?」

エルくんの言葉に、私は思わずギクリとする。

「そんなことはありませんよ。
マネージャーがいなければ、僕たちはここまで来れなかったんですから」
「そうだぜ? オレ様たちマジフォーは、確かに4人だけど……これでわかっただろ?
星は4人じゃできねえんだ」

エルくん、ルイくん、アトムくんが私を見ながら、ゆっくりと言った。
最後にアールくんが微笑む。

「そう……星は5人いないと作れない。その5人目は……マネージャー、きみだよ!」

その言葉に、私は思わず目を見張る。嬉しさで、何も言葉が出てこない。
かろうじて口から出た、ありがとうと言う声は潤んでいた。

「ふふ、涙……隠さなくていいよ? こらえてるのは、アンタだけじゃないし」

悪戯っぽく笑うエルくんの目には、少しだけ涙がにじんでいる。

「っ……! どんな困難があっても……必ず乗り越えてみせます!」

ルイくんは目尻に涙をためながらも、真っ直ぐな目でそう言った。

「エルもルイも泣いてんじゃねえよ! オレたちが揃えば無敵なんだからな!」

涙を必死にこらえようとしているのだろう、上を向きながらアトムくんは力強く言った。

「そういうアトムくんが一番泣いてるんじゃない?」
「バッ、んなわけねえだろ!?」

エルくんの言葉に、アトムくんは慌てて目元を拭った。

「これからもよろしくね、マネージャー!」

笑顔を見せてくれたアールくんの目元から、涙が零れ落ちる。
だから、私もそのままでみんなを見つめた。
きっと大丈夫。みんななら……みんなとなら、なんだってできる。

「……もちろん!」

夜空に輝いた星たちが、私たちを静かに見下ろしていた――。

おしまい